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仕事道具には哲学が隠れている。編集者・ライターの“七つ道具”をご紹介

正解がなければ、ノウハウをシェアすればいいじゃない──まだまだ歴史が浅いWebの編集・ライティング業界を盛り上げるべく、自分なりの方法論を共有していこうとスタートした「【特集】編集者のカンニングペーパー」。

今回はその一環として、編集者・ライターの仕事道具を紹介していく企画「編集者・ライターの七つ道具」をお送りします。


執筆・編集環境は、人によって千差万別。ドキュメンテーションソフトやPC類はもちろん、デスクまわりや仕事場まで、さまざまな仕事道具が使われています。

しかし、特にWebの編集・ライティング業界では、仕事道具が話題にのぼることは多くありません。尊敬する編集者・ライターの諸兄や、バイブルとしているノウハウ本こそ思いついても、他の人の仕事道具についてはあまり思い浮かばないのではないでしょうか。


そこで、CAIXA編集部が「この人の仕事道具が気になる!」と思った編集者・ライターに、どんな"七つ道具"を武器に戦っているのかを聞いてみました

【くいしんさん】“深さ”を用意しておくのが大切──シンプルながら信条が見える仕事道具

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まず一人目は、くいしんさん。ライフスタイル・ローカル・お金・サステナブル・食など、幅広い領域で骨太な記事制作を手がけています。「小手先で考えることより、自分自身が深さを用意しておくこと」という信条を持ち、仕事道具でもシンプルさを重視している印象です。

###プロフィール

くいしん株式会社代表。インタビュアー、編集者、ライター。1985年、神奈川県小田原市生まれ。株式会社FACTに入社し、月刊音楽誌『MUSICA』編集。Webディレクター、株式会社Wasei『灯台もと暮らし』編集部を経て、独立。 くいしん株式会社を設立し、ライフスタイル・ローカル・お金・サステナブル・食等々の分野の記事制作を中心に活動。

###企画案や、インタビューの質問内容を考える際には、どんなツールを使っていますか?

準備が一番大切ですねえ…。何か決まったツールを使うということはありませんが、逆に言えば、身の回りのあらゆるもの・ことが準備になるように、日々、接しているのかもしれません。企画の深度も質問の深度も結局、その人の人間としての深さによるので、都度小手先で考えることより、自分自身が深さを用意しておくことが何より大切だと思います。

こう書くと自分自身が深い人間…と言っているように思えるかもしれませんが、そうではなくて、自分が本当に興味のある話を深められるテーマをいくつか持っておくことが大切なんだと思います。たとえば僕であれば「原点について聞きたい」というように、自身の中にテーマがいくつかあれば、都度の取材に活かせると思います。

質問内容はあまり考えません。基本的には大枠の方向性、聞きたい一点だけを考えて、あとはその場の瞬発力で質問していきます。

###取材の録音・メモ取りには、どんなツールを使っていますか?

取材中にメモはとりません。案件により、「メモをしているように見えたほうが都合のよい場合」のみ、ペンを握ってやるのですが、メモをするとしたら、「1:23」のようにICレコーダーの時間を控えておくくらいです。機材は、適当なICレコーダーと合わせてiPhoneで録音します。バックアップのため、必ず2つ以上、できれば3つは録音するようにしています。

###記事の構成を考えたり、執筆したりする際には、どんなツールを使っていますか?

まず、『CotEditor』というエディタを使用しています。たいていの場合は、書き起こしを全部、CotEditorにコピペして、まずは全体を整えます。ある程度全体像が見えて、写真を挿入したり太字箇所を入れる段階に進んだら、Googleドキュメントに移行します。

CotEditorを挟むのは、「まっさらなベタテキスト」として強い文章をまずつくることが大切だと考えているからです。この段階でおもしろければ、全体の文章の強度は上がります。逆に言えば、いきなり写真を入れたり太字を入れたりすると、「なんとなくおもしろい風の記事」が出来上がっちゃうので、それを避けるために必要なステップかと考えています。

###記事を編集する際には、どんなツールを使っていますか?

Googleドキュメント。使いやすさ、汎用性的に、他に選択肢がないため。最高の編集者のためのドキュメントツールを開発したいくらいですね!noteよりも使いやすいドキュメントツールをつくろう!

###原稿を執筆・編集される際、主にどんな環境で作業をしていますか?

自宅デスク。たまに気分転換のため、内容によってはカフェなど。デスクの上にはMacBook以外、何も置いていません。何かあると気が散るため。BGMはほとんどJ-WAVEで、たまに集中したいときはボーカルのないミニマルテクノを聴きながら執筆しています。飲み物は、水とコーヒー、夕方以降は水のみ。あんまり意識したことなかったですが、MacBookの画面以外のものを目に入れないことを大切にしているのかもしれません。

###その他、「これだけは言っておきたい!」というトピックはありますか?

編集者とライターは読書量がほとんどすべてだと思うので、毎日、本や雑誌を読むのが一番だと思います。Googleカレンダーに毎日「この時間は本を読む」とか入れるとよいですね。Webなら記事、note、ブログを大量に浴びる、文脈を理解する。とにかく活字に触れる時間を増やす。その前提で、それだけだと活字人間になっちゃうので、自然と触れ合う、何にでも興味を持って家の外に出る、映画を観る、音楽を聴く、あらゆるカルチャーやエンタメに興味を持つこと…が、どんなジャンルであれ、いい編集者やライターを育てると思います。


【長谷川リョーさん】高機能メモアプリからアパホテルまで、バラエティに富んだ仕事道具

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二人目は、長谷川リョーさん。ビジネス・テクノロジー領域を中心に、Web記事から書籍まで数多くのヒット作を手がけています。基本的にはシンプルな道具を使いつつも、高機能メモアプリ『Bear』からアパホテルまで、バラエティにも富んでいます

###プロフィール

株式会社モメンタム・ホース 代表取締役 編集協力に『10年後の仕事図鑑』(堀江貴文、落合陽一共著 SBクリエイティブ)、『日本進化論』(落合陽一著 SBクリエイティブ)、『THE TEAM』(麻野耕司著 幻冬舎)など。いずれも10万部を突破。

###企画案や、インタビューの質問内容を考える際には、どんなツールを使っていますか?

何気ない会話、Twitter、Google Alert、LAUNCH Ticker

###取材の録音・メモ取りには、どんなツールを使っていますか?

普通のICレコーダーとバックアップ用のiPhoneのみです。

###記事の構成を考えたり、執筆したりする際には、どんなツールを使っていますか?

高機能メモアプリ『Bear』に構成の組み立てのメモをしつつ、固まったら基本的にGoogle Docsで作成。

###記事を編集する際には、どんなツールを使っていますか?

同上

###原稿を執筆・編集される際、主にどんな環境で作業をしていますか?

ガチで本のライティングを行う際は、アパホテルにこもります。地下に温泉があるので、新宿御苑がオススメです。行き詰まった時は、ストロングゼロをちびちび飲みながら、エンジンを上げてライティングすることもあります。BGMはSpotifyの「Deep Focus」一択です。


【小山和之さん】建築・デザインをバックグラウンドに、機能性を追求した仕事道具

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三人目は、小山和之さん。デザインを軸に、ビジネス・テクノロジー領域での情報発信に取り組んでいます。建築やデザインのバックグラウンドを持つ小山さんらしく、最善の機能性を備えた仕事道具を模索しています。

###プロフィール

編集者。1989年生まれ。Apple Retail、建築の意匠設計、デザイン会社でPjM/編集者、フリーランスの編集者を経て、2018年にデザイン・ビジネス領域特化の編集ファームweavingを創業。デザインとビジネスを行き来しながら、現代のデザイン振興を模索しています。インクワイア所属。

###企画案や、インタビューの質問内容を考える際には、どんなツールを使っていますか?

GoogleDocsかDropboxPaper、Notionのいずれかが主です。プロジェクト次第ですが、外部共有するものはDocsかPaper、自分しか見ないものはNotionです。
PaperとNotionは、Markdownで書けること、UIがきれいなこと、ダークモードが使えることが主な選定理由。Docsは機能的に他で代替が効かないので…という感じです。

###取材の録音・メモ取りには、どんなツールを使っていますか?

僕は「話を聞きながらメモ」が苦手なので、基本取材中はメモをほとんど取りません。とってもPCでキーワードを書くくらい。
録音はSONYのICD-UX560Fと予備でiPhoneのHT Professional Recorderというアプリを用いています。レコーダーは使っている人が多い機種ですが、デザイン上は一昔前のSONYっぽい感じで可もなく不可もなくです…w 
HT Professional Recorderはインクワイアのモリジュンヤさんのオススメです。

###記事の構成を考えたり、執筆したりする際には、どんなツールを使っていますか?

エディタは、ほぼGoogle Docsです。昔はUlyssesや日本デザインセンターが開発しているstoneなどを使っていた時期もありましたが、一番普通なツールに戻りました。

膨大な文字起こしを整理するときには、SublimeTextなどエンジニア系のエディタを使うときもあります。ソフト自体が軽いのと、インデントで情報の親子関係やまとまりを整理できたり、検索で正規表現を使えたりするので。(他ツールでもできるかもですが)

IME(※編注: Input Method Editorの略。文字入力をサポートするソフトウェア)はATOK。記者ハンドブックのプラグインを入れています。本を開かずとも、開くべき漢字などがわかるので、大分楽になります。
推敲段階では、Wordの校正機能と文賢を併用しています。文賢は正直精度面は微妙だと思っているのですが、読み上げができるので音声で誤字脱字を探すように使っています。

###記事を編集する際には、どんなツールを使っていますか?

基本は執筆と同様です!

###原稿を執筆・編集される際、主にどんな環境で作業をしていますか?

まずはなによりも椅子。正直モデルはなんでもいいんですが、一定以上のクオリティの作業用椅子でないと腰がお亡くなりになるので、これだけは譲れないです。今はHerman Millerのセイルチェアです。

あわせて、最近は大型ディスプレイが手放せなくなりました。参照資料、文字起こし、原稿を並べるのでWQHD以上の27インチディスプレイが必須な気がします。

一方で、キーボードやマウスなどの入力デバイスは「Apple純正でいい」という気持ちです。いろいろ試したんですが、作業環境がラップトップと行き来するので、配列や打鍵感が変わらないのを重視するようになりました。

###その他、「これだけは言っておきたい!」というトピックはありますか?

(個人的には)作業環境以上に、いい具合に休憩できる場所が大事だなと思ってます。疲れて集中力落ちてるのにPCに向き合ってても仕方ないので、ベランダで外の空気吸ったり、運動したり、気分を切り替えられるものが作業場所の近くにあるといいっすね。


【鈴木陸夫さん】「筆が乗らない時は無理にPCを開かない」独自のワークスタイルを支える仕事道具

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四人目は、鈴木陸夫さん。ビジネスからカルチャーまで、領域横断で活動しています。「テレビも見ないし新聞やWeb記事も読まない」「筆が乗らない時は無理にPCを開かない」など、独自のワークスタイルを取っています。

###プロフィール

フリーライター。川のほとりで家族と一緒にのんびりしながら、1日4時間労働で心地よい暮らしを探求中。趣味は人の悩みを聞くこと、「当たり前」を解体・再構築すること。お仕事のご依頼はフェイスブックメッセージなどでお気軽に〜

###企画案や、インタビューの質問内容を考える際には、どんなツールを使っていますか?

普段からニュースと距離を取るようにしてます。テレビも見ないし新聞やWeb記事も読みません。SNSも趣味のリストしか基本は見ません。ニュースをフックにした記事は読まれやすいけれど、大きな流れで見たらあまり大事でないことにも流されやすくなるし、ほかの人と発想が似てくると思うので。それよりは個人的な体験や興味があって読んだ本などを起点に企画を考えることが多いです。本当に大事なニュースはそれでも目に入ってくるものだと思っています。

質問内容は、その取材で解きたい一番大きな問い(目的)については真剣に考えますが、細かな質問(手段)はあまり準備しないです。スケールの小さな問いを用意していくと相手がそれに合わせてしまって、小さな話で終わってしまうことが多い気がするからです。その結果失敗することもあります。インタビューイに著書がある場合は時間が許せば読んでいくようにしています。質問を考えるためというよりは、相手が大切にしている価値観や興味の矛先を知るためです。

###取材の録音・メモ取りには、どんなツールを使っていますか?

録音はiPhoneの適当なアプリで。取材中に電話がかかってきて録音できていなかったという苦い経験が何回かあるので、最近は機内モードにするようにしています。メモはノートに手書きでしています。メモを取る目的は、相手の話を構造化して理解するのと、あとで質問しようと思ったことを忘れないためです。

###記事の構成を考えたり、執筆したりする際には、どんなツールを使っていますか?

多くの場合、『OmniOutliner』を使って書いています。文章を構造化するのにとても便利だからです。いきなり表現にこだわるとスピードが出ないので、1巡目は箇条書きに近い形で書いて、構成が固まった後の2巡目3巡目で徐々に表現を置き換えるようにしています。画面の小さいPCだと全体のバランスがわかりづらいので必ず紙に印刷して確認します。脳内で音読して文章のリズムを整えることにも気を使っているつもりです。スマホで開いて段落ごとの分量の調整もします。

###原稿を執筆・編集される際、主にどんな環境で作業をしていますか?

ほぼ100%どこかのカフェで書いています。筆が乗らない時は無理にPCを開かずに本を読んだり友達とおしゃべりしたり体を動かしたりして過ごすようにしています。ゼロ行のこともあります。ランチは必ずちゃんとした店で食べます。日中は日の当たる場所にいることが多いです。夜遅くまで仕事をすることもほぼないです。とにかく心身両方のコンディションが良い状態で書くようにしています。本当に書きたい状態で文章を書いている時はツールに頼る必要はほぼゼロですが、そこまででない時は集中するために音楽の力を借ります。SpotifyのZONEに入るためのプレイリストをよく使っています。

仕事道具には哲学がにじみ出る

以上、計4名の編集者・ライターの仕事道具を紹介しました。

シンプルさ重視の人から機能性重視の人まで、一見するとシンプルに見える仕事道具でも、その裏にはそれぞれの信念がにじみ出ていました

みなさんは、どんな仕事道具を使っていて、その背景にはどんな哲学が隠れているでしょうか。

「編集者・ライターの七つ道具」は、今後も連載企画として続編を出していく予定ですので、乞うご期待ください!

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緊張する取材に臨む5分前。あるいはどうにも上手く書けない原稿を前に、ウンウン唸ってどうしようもないとき。そんな時にスマホをそっと開いて、ちょっとしたコツを見て、少しでも勇気づけられたり、よりよい記事が生まれたりしてほしい。そんなカンニングペーパーのようなコンテンツをお届けしようと思っています。

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