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「書けない」を防ぐのは、「書き方の分析」かもしれない|編集者のカンニングペーパー

緊張する取材に臨む5分前。あるいはどうにも上手く書けない原稿を前に、ウンウン唸ってどうしようもないとき。
そんな時にスマホをそっと開いて、ちょっとしたコツを見て、少しでも勇気づけられたり、よりよい記事が生まれたりしてほしい。そんなカンニングペーパーのような連載です

編集者やライターの皆さん、原稿書いてますか? 書くのって難しいですよね。僕もいまだに正解がわかりません。なんとなく見つけた「自分にとって正解っぽい書き方」を頼りに、今日もキーボードを叩いています。

そんな正解のない「原稿の書き方」について、みんなの方法を持ち寄り、シェアしてみよう!というのが今回の企画です。

自分の書き方を知ることで、「書けない」理由も探しやすくなる、と思っています。どうしようもなくなって「原稿 書けない」ってググった人がこの記事にたどり着いていたら最高ですね。それではさっそく始めましょう。

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【ちなみに】
・今回の記事は、編集チーム「Huuuu」と「モメンタム・ホース(以下、モメホ)」の2チームで実施した勉強会の内容を元に書かれています
・「原稿」といってもいろんな種類があるので、「ウェブ媒体用のインタビュー原稿」を題材に話をします


まず「原稿を書く」を分解しよう

難しいものは、ひとまず整理するところから始めましょう。

「原稿を書く」をざっくり分解すると、僕の場合、インタビュー後の作業は次のような感じです。

①インタビュー音源を聞きながら、文字起こしをする
②文字起こしを見ながら構成を考える
③構成を元に、原稿を書く
④推敲して文章を整えたら完成

まず、文字起こしは「話し言葉をそのまま文章に起こしたもの」です。そのため、話題が前後・重複していたり、そのまま読むと冗長だったり、意味がとりづらかったりします。

そのため、
・話題を整理し、記事のテーマに沿った順番に入れ替えた設計図のようなものが「構成」
文字起こしの「話し言葉」を「書き言葉」に整えていくのが「原稿を書く」
だと認識しています。


ただし、先ほどの作業はあくまで「僕の場合」なんですよね。というのも、まわりの編集者やライターに話を聞いてみると、やり方は本当に様々で。

その中でも、Huuuuとモメホの10人ほどの話を整理したところ、原稿の書き方は大きく以下の2パターンに分けられました。

【パターンA】
①インタビュー音源を聞きながら、文字起こしをする
②文字起こしを整えて、原稿の形にしていく
③推敲して完成
【パターンB】
①インタビュー音源を聞きながら、文字起こしをする
②文字起こしを見ながら構成を考える
③構成を元に、原稿を書く
④推敲して文章を整えたら完成

それぞれの書き方について、詳しく見ていこうと思います。


文字起こしを削って整えると、原稿が出てくる

まず「パターンA」は、執筆前に構成案を作らず、文字起こしを頭から読みながら不要な部分を削る、という作業を何度も繰り返していくやり方です。

文字起こしをひたすら整えていくと、最後に原稿が完成するやり方なので、「仏像づくり」っぽいなあ、と思います。手塚治虫の『火の鳥 鳳凰編』で仏師になった我王が「木の中に仏様がいる」とか言いながら掘り進めていた姿が浮かびます。大きな塊をひたすら削って削っていくと、あるべき姿が見えてくる……。

勉強会の参加者・岡島くんの場合はこんな感じです。

1周目:文字起こしからいらないテキストを思い切って削っていく
→最初は削るだけ、順番の入れ替えはしない

2周目:1周目と違う視点で削りつつ、粗く文章を整え始める
→文章としてはめちゃくちゃ。意味の塊だけを作るイメージ

3周目:削る&粗く整えるの繰り返し。だんだん原稿になってくる
→このあたりで構成を意識し、テキストの順番を入れ替えていく

4周目:きちんとした文章に整える
→足りない目的語を足したり、接続語をつないだり

5周目:リードと見出しをつける

6周目:全体を推敲して完成

岡島くんの場合、本文だけをひたすら進め、80%の精度まで上げたところで、一気の他の要素を仕上げています。

文章だけだと少しわかりづらいかもしれないので、この書き方をビジュアル化しました。

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記事をタイトル、リード、見出し、本文、締めの要素に分け、それらを何回かけて、どういう順番で完成させていくかを表しています

5回目で一気に原稿が完成するのが面白いですね。仏像づくりなら「目が入った」みたいな感じでしょうか……。急に現れる仏像。


要素を分解し、原稿の設計図を組み上げる

対するパターンBは、とにもかくにも「構成」が命。まずは全体の設計図となる構成を作り、それを元に原稿を書き進めていきます。

パターンAが「仏像」なら、こちらは「プラモデル」かもしれません。最初に設計図があり、その通りに組み立てていくと形ができる。そこにシールを貼ったり塗装したりと仕上げて完成する、と。

僕のやり方をまとめると、こんな感じです。

①文字起こしを読みながら、文字起こし自体に見出しをつけていく 
→インタビューの要素を因数分解し、ざっと見返した時に話題を把握できるようにする

②①の見出しだけをコピペして入れ替え、構成案を作る
→記事の内容を改めて整理し、一番面白くなるテーマ(原稿の軸)を考え、そのテーマを一番わかりやすく、面白く伝えられる話題の順番を作ります

③構成案を貼ったドキュメントに、文字起こしを見ながら原稿を書く
→文字起こしのテキストに手を入れて文章の形に整えるのではなく、ぜんぶ書き言葉でリライトするみたいなイメージです
→この際、タイトル以外を頭から順に完成させていきます

僕の場合、パターンAのように何周もしません。頭から書いていって、最後まで書き切ったら原稿が完成しているのが理想です(そうはいきませんが)。

構成案=見出しを並べたものが最初にあって、あとはリードから順に書いていきます。1周目から100%の文章を目指すと粗さが気になって先に進めないので、精度は70~80%くらいを意識。2周目で全体の精度を上げていき、3回目で推敲して完成、みたいなイメージです。

caixa_kanpe_gra__アートボード 1

プラモデルでいうと1回目でパーツを切り出し、2回目で組み上げ、3回目以降で仕上げる感じがグラフで見るとよくわかりますね。ちなみに小さい頃は「SDガンダムBB戦士」にハマっていました。 「飛駆鳥大将軍(ビクトリーダイショウグン)」カッコ良すぎませんか?


記事の構成、どのタイミングで考えてる?

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パターンAとパターンB、大きな違いは「記事の構成をどのタイミングで考えるか」だと思うんです。最初に考えるか、途中で考えるか。

しかし、「構成を途中で考える」とは、裏を返せば「途中で構成を考えても、原稿が成立する」ということのはず。


パターンAとBの違いがなぜ生まれるのかを考えると、普段書いているメディアの性格や、取材の立て付けによるものが大きいように思います。

パターンAの岡島くんの場合、ビジネス系の記事を多く担当していたため、テーマが事前にかっちり固まっていることが多いです。文字起こしの段階で記事のゴール(テーマ)が明確なため、不要な部分を削っていくことで記事の完成形が見えやすいのだと考えられます

一方、僕(だんご)が担当するメディアは、「取材前はAというテーマで考えてたけど、話を聞いてみたらBのテーマのほうが面白かった。こっちでやろう!」なんてことがしょっちゅう。つまり、テーマが後から変わることが多い。

そのため、取材後には文字起こしを見ながら「何をテーマにすれば一番面白いのか?」を考えます。そうやって最初に構成案(テーマ)を決めておかないと、途中で死ぬほど大変になってしまうから。なんてギャンブル……。(そのほうが記事が面白くなることもあるよね、という話はまたどこかで)


構成とは、「その記事のテーマを一番わかりやすく伝える話題の順番」だと考えます。そのため、記事のテーマさえ最初からはっきり見えていれば、構成案を作らずとも原稿を書き進められる、と言えるのではないでしょうか。


記事の書き方には「生き方」が出る?

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生き方だと大げさかもしれませんが、原稿の書き方に性格は出ると思います。

僕の場合、「頭から書いていって、最後まで書き切ったら原稿が完成しているのが理想」なんですが、裏を返せば「岡島パターンのように何周も何周もするのはイヤ」ということ。面倒さがりなので同じところをぐるぐる回るより、できるだけ一発でスパッと決めたい……なんて性格が出ている気がします。

他のメンバーの書き方もグラフにしてみたんですが、やっぱり「人柄みたいなもの」はにじみ出るんですよね。

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「徹夜でガッと仕上げる馬力がないため、先に構成を作って計画的に仕上げます。とりあえず7割くらい完成させるのが精神的にも楽なので」というモメホの小池くん。実直なプラモデルパターンですね。


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「コツコツというより、まとめてやっつけちゃう」派のモメホ・鷲尾さんはリード以外をガガっと進めて、最低限のターン数で仕上げるやり方。説明書を見ずにプラモデルを作っちゃうタイプかもしれません。


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「最初にリードと見出しで文全体のあたりをつけてから、間を繋げていくことが多い」、Huuuuの日向くん。ダイナミックなやり方がチェーンソーでイーグルの像とか作る人っぽいです。


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Huuuuの木村さんは、文字起こしからテキストを抜き出して切り貼りし、そこから構成を考え、順番を入れ替えながら文章を整えていくスタイルだそう。まず先にパーツを切り出してから、設計を考えて組み上げるプラモデルパターンといえますね。現場力が高いタイプだと思われます。

ちなみにタイトルが最後まで90%なのは編集者の人と議論して決めたいから、とのこと。この「タイトルの決め方」もメディアごとに様々だと思うので、この連載で取り上げたいテーマです。


「書けない」を防ぐのは、「書き方の分析」かもしれない

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さて、こんな風に「原稿の書き方」を分析してきたのはわけがあります。

僕自身、WEBライターを仕事として始めて4年ほどですが、最初の年に比べて1本の原稿を書き上げる時間が半分以下になりました。その理由を分析すると、「書けなくて書けなくてどうしようもない」状態で煮詰まる時間が、うんと減ったため。それは、「自分の書き方」ができたから、だと思うんです。

「わからないことがわからない」状態が、一番困ります。僕がライター1年目、1週間くらい原稿がどうしても書けなかったときは、まさにそんな状態でした。でも今は、少なくとも「自分はどこで詰まっているか」はわかります。そこから書けない理由を考え、解決することができるようになりました(とはいえ、まだまだ全然書けない、どうしようもない原稿もありますが)。

原稿を書けなくて困っているという人は、今回の「みんなの書き方」を参考に、自分の書き方について考えてみるのがオススメです。

自分とまったく同じ書き方はないかもしれません。でも、逆に「どこが違うか」を考えていくと、なんとなく自分の書き方がぼんやりと見えてくるはず。このカンニングペーパーが少しでも役に立てば幸いです。


さて、次回は「いいリード文」について考える予定です。お楽しみに!

執筆:友光だんご(Huuuu)
撮影:ハッスル栗村(モメンタム・ホース)
編集:乾 隼人(Huuuu)


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